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東京外国語大学舩田クラーセン(船田クラーセンさやか)の公式ブログです。アフリカ・市民社会(NGO)・環境関係のイベントや授業、耳寄り情報を流しています。特に、アフリカに関心を寄せる学生の皆さん必読情報を満載しています。 ************************ *************** 現在、朝日新聞Web版(アサヒ.コム)に記事を連載中。 「魅惑大陸アフリカ」「モザイクアフリカ」のページ をご覧ください。【連載】変わりゆくアフリカ最前線   http://www.asahi.com/international/africa/mosaic/ *********************************** ** This is an Official Blog Site of Sayaka FUNADA-CLASSEN,Associate Professor of Tokyo University of Foreign Studies (TUFS). The following info. is about events & classes on Africa, Civil Society (NGOs), Environmental issues. English/Portuguese sites are not yet available... Sorry, but please study Japanese!
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昨日、「国際関係とアフリカ地域」の授業のフォローアップ企画と
して、(株)生活の木の宇田川さんに本店でインタビューを実施し
ました。学生の皆さんから寄せられた100を超える質問の中から
ピックアップされた質問に、宇田川さんが丁寧に答えてくれました。

学生以外にも、援助に長く関わってきた若手専門家も参加し、
宇田川さんの分かりやすい、しかし「目から鱗」の話と熱弁に、
耳を傾けているうちに、あっという間に1時間半が経ってしまい
ました。議事録は、「続きはこちら」へ。

Qビジネスをはじめた契機

→創業者の重永家は、もともと当地で写真館を経営していたが、終戦後、代々木にある進駐軍住宅を対象とした瀬戸物(洋食器)に対するニーズがあったため、瀬戸物の小売に転換。その後、過大な在庫を抱えていた産地の問屋から直接買い付けることで、小売から消費地問屋、そして卸売となり、幸運な出発だった。宇田川氏は1973年に入社、オリジナル商品の開発の必要性を提案。その2年後に、後に社名ともなる「生活の木(Tree of Life)」ブランドを立ち上げ、植物画シリーズがヒットするものの外部環境の変化により商品の転換を迫られ、アメリカの展示会で見つけたのが、ヒッピーが売っているハーブ(ポプリ)であった(なお宇田川氏は、ヒッピーが販売していた自然化粧品もビジネスチャンスがあると思ったが、当時輸入業務は行っていなかったため選択肢から消えた。しかし3年後にハウスオブローゼが自然化粧品を輸入開始したという裏話もある)。ハーブに関する情報が国内になかったため、アメリカ等での調査を続けた結果、ハーブを①ポプリ、②お茶、③歴史(クレオパトラの風呂)④ハーブティー、⑤クラフト、として販売していくこととなった。ドライのハーブ産地から直接買い付けた方が安いため、探して仕入れ、瀬戸物の工場で加工した。これが会社の背景で今は94店舗、卸2000社ほどになった。

 

Q途上国ビジネスの活性化

→ビジネスにするためのプロセスをアドバイスする必要がある。JETROからは、プロジェクト(3年間)の成果として、報告書作成とアフリカンフェスタのセミナー開催が要請されたが、それでは意味がないため、技術移転(石鹸の製造)と販売を目標とした。途上国の市民は一次産品に依存しているが、それに自ら付加価値をつけていけるようにすることが必要。付加価値をつけるためには手作業が必要になるが、途上国では人材が余っているため、好都合であった。NGOはそれをやらない。

(途上国では質のいいものは不適合か?)→質が良く安い方がいいに決まっている。安い=悪いという視点は妥当ではない。

 

Qビジネスを導入することで文化が壊れるのではないか?

A。文化は変遷するものであり、それがいいかわるいかは別物。いいところは残して悪いところは変えていけばよいのではないか。例えば、石鹸製造から得た収入で水のタンクを家に置くようになったが、これは現地の住民にとってはとても画期的なことであった。

 

Q住民は儲けたいという気持ちが強かったのか?

A現地の住民は欲がなく、のんびりしている。だから、かつかつしていないが、これが商売人になると欲が出てくるので違ってくる。最初は、石鹸づくりを教えてもらうだけだと思っていたのに、本当に売れる事態になって、彼らにとっては棚から牡丹餅。だから、現地では宇田川氏は神様のような存在で、宇田川氏のアドバイスを遵守している。

 

Q.失敗や苦労した経験について

→失敗はないが、教えるプロセスはそれなりに体力勝負であった。例えば、加工している段階で、どう製品として日本で売るかを、全部一人でやらねばならない。また、指導の過程で分かったのは、彼らは基本的なことができず(線が引けない、カッターで切れない、はさみが使えない、計算ができない)、できても時間がかかる。教育レベルは、20代半ばは日本と変わらないが、30代以降は教育を受けていない層のため大きな差があり、教育の役割は非常に重要だと考える。宇田川氏の持論としてあるのは、人間は誰しも一緒であり、違うのはうまいか、へたか、早いか、遅いかだけ。ガーナ人に、どこのレベルに達したいかと聞いたところ、当然ながら皆「速くてうまい」方を目指したいと答えた。じゃあ、それを目指して頑張ろう、と励ました。

 

Q住民のモーティベーションを継続させるためには?

→気を使わなければダメ。彼らの気持ちを理解し、できないからといって、決して貶めてはいけない。そこは、マネージメント能力が試される点。そこで、できる者とできない者とでペアを組ませて作業をさせた。また、滞在期間の間宇田川氏が実演したのは一回だけで、あとはプロセスを写真で見せ、彼らに考えさせながら技術指導を行っていった。

 

Q6人はどう選ばれたのか?

NGOによる推薦で、女5人に男1人。

 

Qフェアトレードとコミュニティトレード

→付加価値を現地に落とすのは当たり前。フェアトレードと言わざる得ない理由は、「貿易=搾取」であったということのうらがえし。ウガンダの大統領の話では、ウガンダ産のコーヒーは、現地価格キロ当たり1ドルが、イギリス国内では20ドルで販売されているが、その付加価値はウガンダではなくイギリスに落ちており、ウガンダはイギリスに19ドル支援しているのと変わらないことになる。しかし、本来貿易は対等であるべきで、それをわざわざフェアトレードと呼ぶ点に欺瞞を感じる。「あなたたちは、今までフェアーにやっていなかったのですか?」と言いたい。私たちは、もっとポジティブな意味を取引に見出したい。だから、フェアーは当然であり、それにプラス何があるのか、という点でコミュニティに注目した。つまり、付加価値を現地でつけるということ。アフリカには豊富で安価な労働力があるため、これが競争力となる。余っている手を使って付加価値をつけることを増やすことが重要。

 

Q.現地での付加価値づけが可能になった時、生活の木はどうするのか?

→それが一番いい。富は分配するものであり、白人とちがって我々は技術移転を伴う支援をしている。流通というのは、本来そういうものであり、皆が少しずつ儲けて支え合っている。一人だけがとことん利益を一人占めするような経済モデルの破たんが、まさに今起こっていること。社会主義、資本主義の次は、ある程度の平等の達成を目指す社会が来るのではないか。そのような精神が必要であり、現地の住民も外部の人間がどのような志でやっているのかはすぐ見破るものだ。

 

Q.成功していると周囲からも真似されるか?

→真似は歓迎。しかし結局は需要と供給のバランスであり、需要があって初めて供給が成り立つ。製造だけではなく販売までを指導することをJETROに提言したが、採用されなかったため自社で販売した。販売先は開拓すれば良いのであって、真似を恐れてはいけない。なお、利益の3分の1はNGO、3分の1を現地の住民、あとの3分の1はNGOが支援する他地域へと配分し、プロジェクト対象地域や住民のみが被益しないよう配慮がなされている。だから、コミュニティトレードという。模倣を通して、地域が活性化する。しかも今回は日本市場が対象であり、要求水準の高い日本で売れるものは世界で売れるものとなる。だから、市場は開拓すれば良い。

 

Q.ガーナにおける今後の事業展開

→大使館の草の根無償(1千万円)により、生産所兼研修センターとなる施設を建設した。研修センターの設立により、今回の技術指導の対象となった6名が講師となり、技術の普及という次のステージへと移行していくといったように、可能性が広がっていくことを期待する。

 

Q世界的に製品を展開していくためのコツ

→マーケティングとは、誰に、何を売るか、そしてどのように感じさせるか、がカギ。単に同業他社製品の価格を調べる(マーケットリサーチ)のではなく、現在の市場をどのように変えていけるか(マーケティングリサーチ)を考えることが重要。

 

Qシアバターを買う人は限られている。それをどう普及させるか?

→購買客に生活の木の背景を教えることで、本当に必要な人以外の人も買ってくれる。10数年前に、「モノからコトへ…そしてココロへ」というスローガンを打ち出したが、背景を教えることで購買客にココロを届けることが可能となる。これからは、どれだけ客とココロのやり取りができるか、という観点が重要であり、精神文明で成熟段階に入ってきた日本においては特に大事。

 

Q.シアバターの選出理由

→シアバターは元来食糧油として国内で流通していた他、チョコレートの原料の一つとして輸出され爆発的に売れたものの、市場は限られているため、新規市場を開拓する必要性があった。そこで目をつけたのがシアバターの持つ保湿性であり、自然化粧品の基材となることから、この新規市場が成長した。しかし基材は付加価値がついていないので、化粧品のなかで一番簡単な石鹸作りを考えた。このように、まず技術がない段階では、石鹸のように簡単なものから始める。

 

Q.ココロのやり取りで印象深かったことは?

→クロネコヤマトの創業者である小倉氏が、50億円を寄付して設置した福祉財団では、障害者の雇用促進等を目的としたスワンベーカリーを立ち上げ、支援している。生活の木でも、Welfare Tradeという概念を下に、葛飾区の障害者施設において石鹸製造プロジェクトを立ち上げたが、石鹸製造に関われる障害者は少数。そのため、直接製造に従事できない障害者の描いた絵をパッケージに貼り、彼らも巻き込むことを考えた。この事例を、社会福祉法人である済生会が開催するホビーフェアで発表したところ、賞を頂いた。この時、展示していた石鹸の絵を見た母親は泣いて喜んでいて、心のやりとりができたと感じた。Welfare Tradeとガーナのコミュニティトレードは、宇田川氏のビジネスモデルであり、後者はフェアトレードと活動は同じであるが、ビジネスにおけるフェアな流通を促すことを目的としており、概念が異なる。地域の特色を生かしたトレードがコミュニティトレードであり、もしそれが一大ムーブメントになれば、会社としても、好感度アップ等の目に見えない利益が得られる。

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プロフィール
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舩田クラーセンさやか
性別:
非公開
自己紹介:
舩田クラーセンさやか
東京外国語大学 外国語学部 准教授
(特別活動法人)TICAD市民社会フォーラム 副代表

専門は、アフリカにおける紛争と平和の学際的研究。
モザンビークをはじめとする南東部アフリカの調査・
研究に従事。大学では、ポルトガル語・アフリカ地域
研究・紛争と平和を教える。

1993年よりNGO活動に積極的に関わり、援助改革、
アフリカと日本をつなぐ市民活動に奔走。

国際関係学博士(2006年 津田塾大学)
国際関係学修士(1995年 神戸市立外国語大学)

-1994年、国連モザンビーク活動(ONUMOZ)で国連ボラン ティアとして選挙支援に携わる。
-1996年、和平後のパレスチナ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで政府派遣選挙監視団に参加。
-1995年、阪神淡路大震災時のボランティアコーディネイター(神戸市中央区)
-2000年より、モザンビーク洪水被害者支援ネットワーク(モザンビーク支援ネットワークに改称)設立、代表を務める。
-2002年、「食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)」設立に関わる。
-2004年より、(特別活動法人)TICAD市民社会フォーラム 副代表に就任。
-2007年8月より、TICAD IV・NGOネットワーク(TNnet) 運営委員に就任。

単著『モザンビーク解放闘争史~モザンビーク現代政治における「統一」と「分裂」の起源を求めて』御茶ノ水書房 2007年
(日本アフリカ学会 研究奨励賞<2008年度>受賞)

共著 The Japanese in Latin America, Illinois University Press, 2004.
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